翻訳会社は品質管理をどのように行っているか

翻訳

つねに高品質で安定した翻訳を提供するには、行き届いた品質管理の取り組みが不可欠です。実際の翻訳作業では、いつも同じ翻訳者をアサインできるとは限らず、異なる翻訳者が作業してもつねに安定した品質でアウトプットできるように品質をコントロールしなくてはなりません。翻訳というと、翻訳者による翻訳作業のプロセスや工程、その成果物に注目をしがちですが、その品質を陰で支える裏方の存在がなくては、高品質の翻訳は生まれません。今回は、翻訳を陰で支える品質管理について、具体的な品質管理手法の紹介を交えながら紹介していきます。

翻訳の品質管理とは

まず、翻訳の「品質管理」を考える前に、「品質保証」という言葉を理解しましょう。日本翻訳連盟による「JTF翻訳品質評価ガイドライン」によれば、翻訳の「品質保証」(Quality Assurance)とは、「仕様を満たすことを確実にし、実証するために行う活動全体」と定義されています。前回のブログで紹介したように、翻訳の「品質」とは、翻訳成果物が関係者間で事前に合意した仕様を満たす程度のことと紹介しました。そのため、翻訳の品質保証とは、お互いが決めた仕様をどのように守っていくかという活動のすべてのことを言います。そして、その品質保証を実現するために行う個々の具体的な手段のことを「品質管理」(Quality Control)と定義されています。つまり、あらかじめ決めた仕様を守るためにどういうことをするか、その具体的なワークフロー全体を品質管理と理解しましょう。

翻訳品質管理はどのように行われるか

それでは、翻訳の品質管理は具体的にどのように行われるでしょうか。実際の品質管理の工程は翻訳会社によって異なりますが、一般的なワークフローは次のようなものが一般的です。まず、各工程でどのような担当者が登場するか紹介しましょう。

  • 営業担当
  • プロジェクトマネージャー(PM)
  • 品質管理担当者
  • 翻訳者
  • 翻訳チェッカー
  • DTP

まず、翻訳会社には営業担当がいて、発注者の要望をヒアリングします。このヒアリングの段階で、翻訳対象となるドキュメントの内容や分量、言語ペア、予算や納期について確認します。次にプロジェクトマネージャー(PM)がヒアリングの内容を確認し、仕様化した上で、スペックに沿った最適な翻訳工程を決定します。その際、ITやマーケティングなどの翻訳分野に合わせて最適な翻訳者や翻訳チェッカーを選定しアサインします。

その後、品質管理担当者が、仕様を元に翻訳者と翻訳チェッカー向けの作業指示書を作成し送付します。作業指示書とともに、対象となる文書のソースファイルや参照資料、スタイルガイド、用語集などを送ることが一般的です。

翻訳者が指示書に沿って翻訳作業を行った後、翻訳チェッカーによる検品の工程に移ります。翻訳チェッカーは、翻訳者が作業指示書などレギュレーションに沿って翻訳作業をしているかを確認し納品します。

その後、品質管理担当の方で、仕様に沿った翻訳・翻訳チェックとなっているかどうかを確認し、問題がなければ検品を完了します。一般的には、品質管理担当者による検品が一回で完了することはまれで、細かな修正依頼などを翻訳者や翻訳チェッカーに行うことが多々あります。いずれにしても、検品完了後、プロジェクトマネージャー経由で発注者に納品し完了となります。なお、納品後にドキュメントのレイアウトやデザインなどを整えるDTP作業が行われる場合もあります。

上記は、一般的な品質管理のためのワークフローですが、品質管理という、翻訳者を裏から支えるワークフローについてよくご理解いただけたと思います。翻訳会社に翻訳の発注をしたいと考えている担当者の方は、このような翻訳品質管理の取り組みがどのようになっているか参考にしてみてはいかがでしょうか。