失敗しない通訳会社の選び方

通訳者

通訳サービスには大きく分けて2種類あります。1つは案件ごとに単発で通訳する「スポット通訳サービス」、もう1つは、企業に通訳者が一定期間常駐する「社内通訳サービス」です。今回は契約形態に照らし合わせて、2種類の違いと失敗しない通訳会社の選び方についてお話しします。

「スポット通訳」「社内通訳」の担当が別々だと面倒?

クライアントの通訳需要が不定期、または頻度が少ない場合、案件ごとに最適な通訳者を手配するのが「スポット通訳サービス」です。新型コロナウィルスが猛威を振るった2020年初春、訪日客が激減し、商談通訳を始め、スポット通訳需要が著しく減少したことは記憶に新しいところです。「単発の他にプロジェクト付や企業付の案件を紹介してもらえませんか?」と、懇意にしているフリーランス通訳者から相談を受けることが多くなったのもこの頃でした。

「SECは、スポット通訳も社内通訳も担当者が同じだからいいね」

一部の通訳者からそのような声を寄せていただいたことがあります。平時であればフリーランス通訳者は単発のお仕事を、企業に常駐する社内通訳者は中長期的なポジションを求めるのですが、どちらか一方の需要が激減すると棲み分けのバランスが崩れてきます。また、あくまで業務内容でお仕事を選択し、働き方に拘らない通訳者も一定数おります。どちらか一方の働き方に絞るのではなく、タイミング次第で効率よく仕事を埋めたいと考えたときに、同じ会社に問い合わせをしても、お仕事の形態によって担当が異なるとストレスを感じるようです。

通訳会社や派遣会社は、なぜこの2つの通訳サービスを別々に操配するのか?

考えられる要因として、「スポット通訳」がクライアントから委託を受けた通訳会社が通訳業務を請け負うサービスであるのに対し、「社内通訳サービス」は労働者派遣が大勢を占めるからではないでしょうか。派遣会社は通訳者以外にも様々な職種のスタッフを派遣しているため、労働者派遣法や労働契約法に精通しています。反面、労務の提供を目的としない契約形態はあまり得意でない会社が多いようです。

利用する通訳会社が請負と派遣、どちらに重点を置いているか?

まず初めに、労働者派遣に重きを置いている会社は、通訳者が社内の一員として働くため、「いつでも通訳・翻訳を依頼できる」「同じ人材が中・長期間コミットする」ことで、良くも悪くも就業先企業へ丸投げできます。就業先の業務に最適な人材であれば、通訳・翻訳品質にコミットする機会は多くないでしょう。ほとんど工数をかけることなく、派遣元は月々纏まった収益を得られます。但し、要求レベルが高ければ高いほど通訳者の派遣料金は割高になるため、長期派遣ともなれば有休や社会保険料などの経費が重く圧し掛かってきます。資金力がある派遣元でないとリスクの高い契約となるでしょう。

次に請負の比重が高い通訳会社は、案件ごとに最適な通訳者を人選する目利きが必須で、多くの通訳者を囲い込むための人脈作りに長けていなければなりません。フットワーク良く現場へ赴き、各通訳者の訳出しの特徴や品質を抜かりなく確認していることでしょう。新規やONE OFF案件は非常に工数がかかるため、リピーターへの依存が高く、大量の案件を効率よくシステマティックに操配していかないと纏まった収益を望めません。

請負と派遣の狭間にあるのが「準委任契約」です。請負と違い、仕事の完成を目的としない一定の通訳・翻訳業務を行うことを約束し、その遂行に対して報酬を得る契約形態を指します。IT業界のみで用いられるSES契約(システム・エンジニアリング・サービスの略称)と中身は同じというと分かりやすいでしょうか。あくまで業務の委託が目的であり、労務の提供を目的とするものではありません。その点を誤ると偽装請負に発展するため、充分注意する必要があります。IT分野の取扱いが少ない会社では、馴染みがない契約形態でしょう。

まとめ

通訳サービスには「スポット通訳サービス」と「社内通訳サービス」がありますが、通訳者を探す場合、通訳業務における外注契約の違いを熟知し、請負契約、準委任契約、SES契約、業務委託契約、派遣契約の5つの契約形態において十分な経験を持つ通訳コーディネーターが在籍する通訳会社を選ぶと、法令を遵守した運用を可能にし、且つ業務の特性にあった通訳者と巡り合う確率が高まるでしょう。