機械翻訳のメリットとデメリット、導入時の留意点について

翻訳

2016年9月、Googleが、ディープラーニングを使ったニューラル機械翻訳サービスを発表し、機械翻訳の精度が飛躍的に向上したことは記憶に新しいところです。それ以降、Google翻訳をはじめ、さまざまな機械翻訳サービスが登場し、日常生活だけでなく、ビジネスシーンでも一般に使われるようになりました。しかし、その一方で、なんとなく便利なツールだと思っていても、具体的にどのように自分の仕事に役立てていけばよいか分からないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、機械翻訳のメリットやデメリットなど、導入にあたって留意すべき点についてご紹介していきます。

機械翻訳のメリット:翻訳作業を高速化・低コスト化できる

機械翻訳サービスは、「Google翻訳」や「Deep L」のようにWebブラウザやアプリケーション上で翻訳作業ができるツールですが、その最大のメリットは、翻訳作業の高速化と低コスト化を実現できる点にあります。機械翻訳が今のように広く使われるようになる前は、翻訳といえば翻訳会社に外注するか、社内の翻訳者に依頼するかのいずれかでした。いずれの方法でも、翻訳会社への発注作業や翻訳者への依頼から始まるので、翻訳ができあがるまでに時間がかかります。また、費用についても小さくないコストがかかっていました。

機械翻訳の場合は、翻訳したい原文を入力するだけで瞬時に翻訳文が返ってくるため、スピードについては人手翻訳の比ではありません。また、機械翻訳だけで完結させる場合、人手翻訳よりもはるかに低コストで翻訳が可能です。そのため、最近では、社内業務のDX推進の文脈で、翻訳作業のデジタル化を進める企業が積極的に機械翻訳を導入しています。利用シーンとしては、情報収集の効率化として、海外サイトから一次情報をクイックに取得したい場合や、社内資料を海外の拠点などに共有する際に役立ちます。

機械翻訳のデメリット:翻訳の品質が不安定で、品質を安定させるための手間がかかる

一般的に、人間の翻訳者が時間をかけて行う翻訳の方が、機械翻訳よりも品質が高いとされています。機械翻訳、特に現行のニューラル機械翻訳では、自然な訳文となる一方で、訳抜けや訳の重複、固有名詞や数字の誤訳などがしばしば発生すると言われています。そのため、人間によるチェックなしで機械翻訳だけで完結させるのであれば、プレリリースなどの対外的な資料に使うのはリスクが高く、あまりおすすめできません。

機械翻訳は、コーパスと呼ばれる原文と訳文の対訳データを機械翻訳エンジンに学習させることで翻訳品質を安定させています。例えば、「A」という原文は「B」という訳文に翻訳するように、という規則を対訳データに登録して、エンジンに学習させることで翻訳品質を安定させています。いいかえれば、エンジンに学習させた対訳データ(訓練データとも呼ばれる)の量と質に機械翻訳の品質が左右されることになるのです。そのため、一定以上の品質を機械翻訳だけで実現しようと思うのであれば、質の高い対訳データをあらかじめ、大量に学習させておく必要があります。また、対訳集の定期的なメンテナンスも不可欠となります。

機械翻訳のメリットやデメリットについて簡単にご紹介してきましたがいかがでしょうか。簡単にまとめてみましょう。

機械翻訳のメリット
・翻訳作業の高速化・低コスト化を実現できる

機械翻訳のデメリット
・翻訳品質が不安定で、安定化させるために準備やメンテナンスが必要

それでは、ビジネスで機械翻訳を上手く活用するにはどのようにすればよいのでしょうか。次回は、機械翻訳と人手翻訳の良いところを組み合わせた「MTPE」という考え方についてご紹介します。